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006 また朝を迎えてしまった

ผู้เขียน: 栗須帳(くりす・とばり)
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-03 19:00:50

 枕元の時計を見ると、朝の8時だった。

 もう二度と、迎えることがないと思っていた朝。

 ため息を吐き、頭を掻いた。

「あいつは……」

 隣で寝ていた海がいない。

 もう出ていったのか? そう思い起き上がった大地の背後から、海の声がした。

「おはよう」

「……」

 振り返ると、コーヒーカップを持った海が自分を覗き込んでいた。

 笑顔で。

「……おはよう。もう起きてたのか」

 海からカップを受け取り、一口飲む。

「……うまいな。コーヒー淹れるの、得意なのか?」

「裕司〈ゆうじ〉が好きだったからね。結構練習した」

「……そうか」

「うん、そう」

「よく眠れたか?」

「うん。大地のおかげ」

「何もしてないと思うけど」

「一緒に寝てくれたじゃない」

「間違ってはないんだけど……人が聞いたら誤解されそうだな」

「困る?」

「いや……どうでもいいよ」

「裕司がいなくなって2か月。ずっと一人で過ごしてきたの。本当、寒くて寂しくて辛かった」

「そうなのか? 俺はてっきり、昨日のように毎晩男を漁ってたんだと」

「見境のない女みたいに言わないで。あんな風に声をかけたの、昨日が初めてだったんだから」

「じゃあ、これまでずっと我慢してたのか」

「そうだよ。死んで裕司の元に行くんだから、それまでは操を守るって決めてたの」

「じゃあなんで、昨日はその誓いを破ったんだよ」

「あれはその……仕方ないじゃない。死ぬ決意が揺らいじゃったんだから。これから決心がつくまで、また一人で寝なくちゃいけないんだって思ったら耐えられなくて」

「まあどっちにしろ、死んでまでして会いたい男への操なんだ。守れてよかったな」

「大地のおかげだけどね」

「そうだな、だから感謝しろ。そして二度と、ああいうことはしないでくれ」

「なんで大地、そんなに気遣ってくれるの?」

「嫌なんだよ、そうやって自虐的に抱かれる女が。それって自傷行為みたいなもんじゃないか」

「ふふっ」

「なんでそこで笑う」

「ごめんなさい。でも、ふふっ……大地、面白いなって思って」

「芸人を目指してるつもりはないんだが」

「そういう意味じゃなくて。どうせ死ぬ私のことなんか、放っておけばいいのに」

「ただの他人なら、こんなこと思わないよ」

「他人でしょ? 私たちお互い、名前と年齢しか知らないんだし」

「それと、お互い死にたがってる馬鹿ってこととな」

「違いない、あははっ」

「ははっ」

 海が遮光カーテンを開けると、部屋が一気に明るくなった。

「いい部屋ね」

「そうか? 普通だろ」

「私が前住んでたところは、向かいがオフィスビルだったの。カーテンを開けたままだと丸見えだから、ずっと閉めてたの」

「ここは国道沿いだからな。車の音がうるさいのが困るけど」

「でも本当、気持ちいい。ねえ、ちょっとだけ窓、開けていい?」

「いいよ。たまには空気も入れ替えないとな」

 窓を開けると、大地が言ったように車の音が耳に響いた。

「ここに引っ越した頃は、この音が嫌いだったんだ」

「今は?」

「嫌いなのは変わらない。でもまあ、慣れたって感じだな」

「そうなんだ。私は結構好きだな。誰かと繋がってるって感じで」

「どんだけ寂しがりなんだよ、お前は」

「仕方ないじゃない、寂しいのは本当なんだから」

 そう言って大きく伸びをした。

「お腹、空いてない?」

「朝は食わない派なんだ」

「……大地って本当、コミュニケーションをとる努力を放棄してるよね」

「なんでだよ。朝食わないのは本当なんだし、何も悪くないだろ」

「私がこう聞いたのは、一緒に食べようって誘ってるからでしょ? それぐらい分かりなさいよ」

「だから俺は食わないんだって。食いたきゃ一人で勝手に食えよ。冷蔵庫に何かあるだろ」

「だーかーらー、もう用意してるんだってば」

「作ってるのかよ」

「そうよ。大地の分もね。それでどうなの? 食べる? 食べない?」

「いや、その……作ってくれてるんだったら食べるよ。ここでいらないって言うほど、俺も空気読めない訳じゃないから」

「よかった。じゃあテーブル出してて。持ってくるから」

 それでか。さっきからいい匂いがすると思ってたんだ。

 そう思い、テーブルを出してから洗面台に向かった。

 * * *

「……」

 顔を洗い鏡を見る。

 情けない面だな、お前。

 死地に向かったにも関わらず、またこうして一日を始めようとしている。

 昨日出会ったばかりの、おかしな女と一緒に。

 昨日思ったよな。こうして顔を洗うのも、これで最後なんだって。

 どれだけ自分との誓いを破るんだよ、俺は。

「冷蔵庫の中、卵とベーコンしかなかったから」

 テーブルに並んだ二枚の皿。

 それを見て。大地は自虐的な笑みを浮かべた。

 笑うしかないよな、こんなの。

 これまでの人生、女に飯を作ってもらったことなんかなかった。

 一夜を共にした女もいない。

 死ぬと決めてから、こんな初体験をしてる馬鹿がここにいる。

 本当、馬鹿げてる。

 でも。

 不思議と気持ちが軽くなっていた。

 海の笑顔に、心が癒されている。

 もうすぐ死ぬ俺に、必要のないひと時。

 神がいるならこんな時間、もっと必死に生きてるやつに譲ってやれよ。

 そう思い、笑った。

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